2017年12月21日木曜日

【共同研究「俳優育成システム研究会」シンポジウムが行われました】


12月9日(土)、桐朋学園芸術短期大学2102教室において、東京演劇大学連盟が後援する文化庁助成事業「俳優育成システム構築のための調査事業」についてのシンポジウムが開催されました。
昨年から演大連では、演劇実戦系大学における初期教育(大学1、2年生程度)の演技の実践指導について、「スタンダード」というものが構築できるのか、できるとすればどういったことが必要なのか、共通の教科書の作成は可能か、などについて研究するプログラムを実施しています。昨年度は日本大学主催で、毎月各大学から講師を招き、基礎教育についてのモデル事業を行っていただきました。加えて夏には韓国から演出家のソン・ヒョンジョン氏、オーストラリアからは演劇教育者として高名なオーブリー・メロー氏を招聘して、1週間のワークショップを実施しました。
本年度も桐朋学園芸術短期大学がその方針を引き継ぎ、海外を含めた様々な演劇人たちにワークショップ形式で授業を行ってもらい、学生たちの、さらには指導者の反応をつぶさに観察してきました。さらに研究会のメンバーで韓国総合芸術大学の演劇科を視察し、海外の大学の演劇教育事情にも目を向けてきました。1月にはシンガポール・ラサール芸術工科大学への視察を控えています。

この日は月一回で行ってきたワークショップの最終回。講師は劇作家・演出家の鴻上尚史氏でした。初期教育を「発声の仕方」に特化したユニークでスピーディーな授業に学生たちも意欲的に参加し、次々と自分の声の悩みを打ち明けている姿が印象的でした。

夕方に開催されたシンポジウムには鴻上氏にも登壇していただき、それぞれの大学の教員で構成された研究会のメンバーとともにテーマである「初期俳優教育のステイタスとメソッド」について議論が交わされました。
シンポジウムの登壇メンバーは鴻上氏のほかに藤崎周平(日本大学)、中村一規(桜美林大学)、土屋康範(多摩美術大学)、多和田真太良(玉川大学)、司会進行の高橋宏幸(演劇批評家・桐朋学園芸術短期大学)でした。
2年間この研究会に参加しているメンバーだからこそわかるこのワークショップの参加学生たちの変化や成長を踏まえ、初期教育に必要なものは何なのか、そして大学で演劇を学ぶということはどういうことなのかについて熱いやり取りが続きました。
5つの大学ではともに演劇実践系大学とは言っても、カリキュラム・ポリシーも違います。「職業俳優」として立つための素地を提供することを目指している大学もあれば、「演劇」を通して社会人として必要なツールを学ぶことを目的としている大学もあります。それぞれに共通する「スタンダードとは何か」。話は尽きません。


学生たちからも様々な意見、質問が飛び交いました。「才能と技術」という話にもなりました。演劇を取り巻く様々な立場や意見、考え方の人間が一堂に会し、建設的な議論を繰り返し、見識を広げ、深めていくことこそ、「大学で演劇を学ぶこと」の大事なメリットなのかもしれません。

シンポジウムやワークショップの詳しい内容は記録集として発刊される予定です。

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